週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2000年3月15日号
若手マジシャンがフラミンゴで激安ショー
 歌って踊れるマジシャンか、はたまたマジックができるシンガーか?
 24歳の若手パフォーマーが演じる激安ショーがフラミンゴヒルトンのメインシアターで始まった。

 彼の名前は Darren Romeo。アメリカ人にしてはかなり背が低く小柄だ。体型や風貌に威圧感がないためか、役者というよりはどこにでもいるような好青年といった感じだ。
 ショーのタイトルは Darren Romeo The Voice of Magic。料金はなんと激安の$5.95 (このページにある割引クーポン利用時)。
 タイトルやその低料金から、ありふれた声帯模写的なショーを想像してしまいがちだが、意外なことにこれがなかなかすごい。単なるモノマネショーでもなければマジックショーでもない。有名歌手のモノマネとマジックを同時にやってしまう、つまり歌を歌いながらマジックもやってしまうというおそらく世界でも例を見ない彼独自の新しいスタイルのショーだ。

 スティービーワンダー、エルトンジョン、トムジョーンズ、ライザミネリ、リッキーマーチンなどのモノマネで会場を爆笑の渦に巻き込んだかと思うと何やらいつのまにかマジックを始めている。タネが想像できてしまうような三流マジックも少なくないが、あっと驚く大魔術も披露してくれる。さすがに大魔術の際は本人も息を止めて真剣な表情で演技をしているが、それでもすぐに歌い出したり踊り出したりしてしまう。本当に休む暇がないパフォーマンスで、これを毎日やっているのかと思うと声がかれてしまう(モノマネはのどによくない)のではないかと心配になる。

 客をステージに上げて行う観客参加型のマジックもなかなかおもしろい。特に観客を選ぶ方法がユニークで印象的だ。客席に背を向けて立った Darren Romeo が ステージの上から後ろ向きにぬいぐるみを投げ、そのぬいぐるみをキャッチした者がさらにもう一度同じようにその位置から後ろ向きにぬいぐるみを投げ、最終的にそれをキャッチした者がステージに上がる。つまり、「選ばれた者はあくまでも偶然の結果でありサクラではありませんよ」 と言いたいわけだ。

 独創的なのはショーの内容だけではない。時間帯も変則的だ。午後3時開演となっており、もはやこれは「ナイトショー」 ではなく「デイタイムショー」ということになる。夜の行動が中心となりがちなラスベガスにおいて、この時間帯は考えようによっては非常に便利かもしれない。

 さて気になる料金だが、前述の通り左の割引クーポンを印刷してフラミンゴヒルトンのチケット売場に提出すれば激安価格$5.95 になる。このクーポン自体は、「通常料金 $14.95 が無料に! ただしこのクーポン利用の際は必ず1杯$5.95のドリンク引換券を購入のこと」 となっており “無料”が強調されているが、ようするに 「$5.95 で入場券を買うとドリンク1本が無料で付いてくる」と考えればよいだろう。いずれにせよビールを飲みながらショーを観て$5.95 とはなんともありがたい話である。

 さて、この安さの陰には苦労話もある。Darren Romeo 自身がラスベガス大全に語ってくれたところによると、実はこのショー、昨年の11月末から始まっており、すでに3ヶ月が経過しているにもかかわらず、その成績(観客数)は決して芳しくないという。そして開幕直後は1時と3時の毎日2回公演だったが、2月からは3時のみの毎日1回公演(水曜日は休演)に減らされてしまったとのこと。
 結局彼は、「名前が売れるまではひとりでも多くのお客様に観てもらうことが大切。収入を度外視してでも安くする」 との戦略で、地元の雑誌やラスベガス大全などに協力を求め割引クーポンの配布を始めることにしたという。
 ちなみに彼は昨年までシーザーズパレスのマジカルエンパイヤで “雇われマジシャン” として簡易マジックをやらされていた。今回のフラミンゴへの移籍は収入こそ不安定になったものの自分のショーを持てたという意味ではとりあえず大出世といってよいだろう。彼の最終的な目標は自分独自の専用ステージを持つことだというが、そのためにはなんとしてでも今のショーでそれなりの結果を出す必要がある。
 ランスバートンやシークフリード&ロイと比べるとかなり見劣りするショーだが、料金を考えると十分すぎるほどの価値あるショーなので、ぜひ日本の読者も応援してあげて欲しい。今後の成績によっては大ブレークする可能性を秘めたショーだが、一方、競争が激しいこのラスベガスにおいてはすぐに消えてしまう可能性も十分にある。興味がある者は早めに観ておいた方がよいかもしれない。


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