週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2000年2月2日号
PARIS ホテルで “ノートルダムの背むし男”
 1月 22日からパリスホテル内の劇場 Theatre des Arts で、ヴィクトル・ユーゴ原作 The Hunchback of Notre Dame (日本語訳: ノートルダムの背むし男) のミュージカル “Notre Dame de Paris”(英語版) が始まった。
 1998年9月にフランスのパリでスタートしたフランス語版は、初年度から数々の賞を総なめにしてきた話題作で、ヨーロッパおよびカナダのフランス語圏ではわずか1年で 200万枚のチケット、700万枚のCDを売り上げたというからその人気ぶりがうかがえる。

 そんな勲章を引っさげて米国に乗り込んで来た今回の作品だが、当然のことながら関係者の鼻息は荒く、英語版の歌詞はあの映画タイタニックのテーマソング・“My Heart will Go On”を書いたグラミー賞ライター Will Jennings に担当させたという。
 作品自体の話題性もさることながら、今回最も注目されていることは、それだけの話題作がニューヨークのブロードウェーでもなく、ロスアンゼルスのハリウッドでもないラスベガスで初上陸を果たしたということだ。これはミュージカルという興行業界にとってもラスベガスの街全体にとっても歴史的“大事件”と受け止められており、今後ラスベガスがミュージカルの本場となっていくのかどうか、関係者はその成り行きを大いに注目している。

 さて今回取材した感想だが、パリスホテルのフロントロビーにほど近い劇場に入ると意外にもシンプルなインテリアに少々驚かされる。ずっしりしたフランス風の古めかしい荘厳な劇場かと思いきや、予想に反して直線とダークブルーを基調としたモダンで都会的な美しさが印象的な劇場だ。
 キャパシティーは約 1200 席と、広くも狭くもないまずまずの広さといった感じだ (1階席のみで 2階はない)。フロアのレイアウトは、ステージから背後の壁までの奥行き方向が浅く、左右の横幅がかなり広くなっているため、ステージから後方に離れた席でも十分に良い席だが、中心から左右に離れた壁際の席の中にはかなり見づらい席もあるので注意が必要だ。また、会場の中央部を左右に走る通路よりも前のセクション (ステージに近い 10列ほどのセクション)は、フロアの傾斜がゆるいため、自分の前の座席に背の高い人が座った場合、視界をさえぎら れる可能性がある。したがってこの劇場でのお奨めの位置は後方セクションの中央寄りということになる。もちろん役者を間近で見たいという者は最前列付近も悪くないだろう。

 時は 15世紀、荘厳なるノートルダム大聖堂が建つパリの街で、ジプシー達は役人に追われながらも強くたくましく毎日の生活をおくっていた。そんなジプシーのリーダーに育てられた激しく美しくセクシーで自由奔放な娘・エスメラルダと、彼女をそれぞれの形で愛する3人の男を中心にこの物語は繰り広げられる。
 奇形に生まれたカジモド (背むし男) は、その醜さゆえに大聖堂の鐘つきとして鐘楼の中に閉じ込められるような生活を強いられる。赤ん坊の頃に大聖堂の前に捨てられていたところをフロローに助けられたと信じ、彼に常に忠誠を尽くしてきたが、あるとき唯一自分を愛してくれていると思っていたフロローの陰謀で、エスメラルダの誘拐に荷担させられそうになってしまう。心優しいカジモドは怒り、エスメラルダやジプシー達を助けようと走り回るが、結局エスメラルダは死刑にされてしまい彼の願いはかなわない...。

 各役者がそれぞれ持ち前の美声で Will Jennings が書いた英語版のセリフを歌い上げていくシーンや、ストリートダンサー的な俊敏な動きを見せるダンスなどが見物だ。また、ジプシー達の生活を表現するために登場する貨物運搬用のパレットや工事現場で使われる柵やロープなど奇抜な小道具の使い方なども興味深い。ただ、ステージの背面にセットされた舞台装飾 (大聖堂をイメージした壁) が最初から最後まで基本的に同じなのは少々物足りなさを感じなくもない。

 なお参考までに、この物語は数年前ディズニーによってもアニメ化されており (日本語の題名は “ノートルダムの背むし男” ではなく “ノートルダムの鐘”)、日本人にもなじみがあるストーリーだが、そのディズニー版では、もともとは悲劇だった原作をディズニーらしくハッピーエンドで締めくくっているため、今回の “Notre Dame de Paris” とは多少異なっている。

 正味公演時間は 1時間 55分。ミュージカルという事情もあるが、ラスベガスの一般的なナイトショーのほとんどが正味1時間 30分以内に収まっていることを考えるとかなり長いショーといってよいだろう。
 当然のことながらすべて英語による演出のため、かなり高度な英語力を必要とする。ミュージカルファンにとってはぜひ観ておきたい話題の一作だが、そうでない者にとっては難解で眠くなってしまうかもしれない。

 日曜日と月曜日を除く毎日 7:30pm と 10:30pm の2回公演。料金は $69.50 (税込み)。この料金にドリンクは含まれていないが、劇場入口で各種ドリンクを買うことができる。座席位置は全席指定。チケットはパリスホテルのフロントロビー前にあるボックスオフィスで。
 なお、前売りチケットは電話 702-946-4567 で手配可能だが、当日券でも問題なく手に入りそうだ。ちなみに取材時(1月 29日、10:30pm の部) は土曜日であったにもかかわらず、会場の半分も埋まっていないという少々さびしい公演だった。まだ始まったばかりということもあり知名度が低いためか、それともミュージカルという難解なショーはラスベガスにそぐわないのか、今の段階では判断しかねるが、今後の興行成績が大いに気になるところだ。


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